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五十路男物語
第4章 あたらしい暮らし、その先へ
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理沙の誕生日が近づいてきていました。
その頃には理沙との距離もすっかり縮まって、お互いに「大切なひと」という位置づけになっていました。
知り合ってから初めての誕生日だし、何か思い出に残るものをあげたいなーと思いLINEを入れます。
なち
「理沙ちゃんもうすぐ誕生日だったよね。」
「あんま高いものは困るけど、大丸かどっかでなんか見に行こうか」
理沙
「えー、そんな気を遣ってくれなくても大丈夫。」
「でも可愛いリングがほしいですww」
なち
「結局いるんかーいw」
理沙「えへへw」
この手の装飾品には基本的に興味ゼロな私。
あーでもないこーでもないと試着しまくる理沙に付き添って、札幌駅界隈の大小のジュエリーショップを回ります。
なちさんこれどうですか?
こっちのが可愛くないですか?
こっちとこっちの色どちらが良いですかねー?
「あーかわいいんじゃない?(よーワカラン)」
若造の頃からそうですが、オッサンになっても理解不可能である。
何軒まわったのか、もう覚えていません。
なち
「さっきの店でかわいいって言ってたピンクゴールドのやつにしたら?(疲れてきたw)」
理沙
「うーん、あのリングも可愛かったけどもう一軒だけ(^ ^)」
地下街の奥の奥の小さなお店。
吟味すること数十分…。
「これ、すごいかわいいです!!」
細かい装飾の入った細い2つのリングを組み合わせた、おっさん目線でもかわいいやつ。
うん。かわいいんじゃない?
「なちさんありがとう。大切にするね♪」
嬉しそうにニコニコ笑う理沙を見て、半日歩き回った疲れも消えていくのでした。
後日の理沙
次の日、出勤してイベントのアイテム選定をすべく、取引先のリストを眺めながら、昨日の理沙の子供のように喜ぶ姿を思い出してニヤニヤしている私。
ピロリン♪(理沙のLINEの音)
おそらくは職場のトイレなのか?
右で1枚、左で1枚。
それぞれの薬指に一本ずつリングをつけて変顔で映る写真。
「仕事時間中になにやってんだw」
理沙との関係が順調に進んでいることに私自身も浮かれていましたが、どうやら理沙もお仲間なようです笑
「なちさんに会えない時も、このリングを見たら元気が出ます♪」
もう希望しかありません。
いまになって思えば。
私は美雪との長く続いたすれ違い。
理沙は元夫との長く続いた問題。
お互い、しんどい時間が長かった分、誰かに好かれることも、誰かを好きになることも、余計に嬉しかったのかもしれません。
苫小牧でお泊まり
少し時間が経ったある日。
美雪が2泊3日の東京研修へ行くことになり、綾も親友の○○ちゃんの家へお泊まり会に行きたいと申しておる。
……なんて絶妙なタイミングw
理沙とも「一度優太も含めてお泊まり会をしないとね」とも話していたので、理沙にLINEしてみます。
なち
「実は金曜日から家人が皆いないのですが、土曜の夜に理沙ちゃんさえ良ければ優太と苫小牧に行ってもよろしいか?」
理沙
「急っすねw」
「なんにもおもてなしはできないっすよ(^ ^)」
「土曜日夜だったらなち君に会わせたい人がいるかも?」
※この頃から呼び方が変わった記憶
なち「えー、誰誰?」
理沙「内緒ww」
まぁ、誰かは薄々わかっていましたが、「じゃあサプライズ楽しみにしてるね!」って返信したのでした。
駅からの道も覚えてしまった理沙と遥のアパート。優太も見慣れない街並みに少し戸惑いながらも、「はるちゃんと遊ぶのたのしみー♪」などとお気楽に歩いて行きます。
到着してみると、やはり予想通り。
理沙のお母さんが来ていました。
お母さん
「なちさん初めまして。理沙の母です。」
なち
「初めまして、なちと言います。理沙さんと良いお付き合いをさせてもらっています。」
理沙がお母さんと仲良しなのは聞いていたので、特に驚きもしませんでした。
理沙
「えー、もうちょっと驚いてくれるかなと思ったのにー!(ニコニコ)」
なち
「いやいやいやいや、失礼があったら困るからちゃんと教えてーな笑」
そんなやりとりをみて目を細めるお母さん。
「なちさん、この子は前の結婚でずっと苦労してきて、難しい問題の終わりも見えないから辛くていつも泣いていたんです。でもこの何ヶ月で笑うようになりました。」
「それが本当に嬉しくって。ありがとうございます。」
うっすらと涙を浮かべる理沙のお母さんに、私も姿勢を正します。
「いえ、僕の方こそ毎日救われています。まだ片付けていく事も多いんですけど、彼女を守ってあげたいなって思っています。」
隣で泣いている理沙。
電車の時間が迫っていたのをギリギリまで私たちの到着を待ってくれていたお母さんは
「本当にお願いしますね。」と何度も頭を下げて帰って行きました。
なんだか胸がいっぱいで、その日の夕食に何を食べたのかは完全に忘れてしまいましたが。
部屋中に虎の子のリカちゃんセットを大量に領域展開している遥の自慢話を聞きながらニコニコして「スゴイねー!」と対応している優太に「お前すげーな。」と感心したり。理沙と子供2人の3人で仲良くお風呂に入ったり。仲良く2人で並んで絵本を読んでいる姿を見て、理沙と2人でホッとしたり。
子供たちが一緒の布団で眠ったあと、理沙とゆっくりと話をします。
なち
「お母さん不意打ちはあかんてw」
理沙
「だって、予告したら普段のなち君が見てもらえないかなと思って。」
なち
「お母さん安心してくれたかな?」
理沙
「うん、会ってくれてどうもありがとう。」
そっと寄り添ってくる理沙。
すこし間を置いて、一息ついてから話し始めます。
「なち君のことが凄く好きだし、ずっと一緒に居たいと思う。」
「優太くんも元気で優しい子だと思う。」
「でも、私は優太くんの母親にはなれないよ。」
「遙のことで手一杯だし。優太くんのお母さんになる覚悟がない。」
一瞬考えて、口を開きます。
なち
「今はそれでもいいよ。時間もあるからよく考えていこうね。」
理沙が優太のことに躊躇があることは気付いていました。
でも、自分が頑張ればなんとかなる。
当時の私は心からそう思っていました。
後日の話し
あとから理沙に聞いたのですが、理沙は時を同じくして両手薬指のリングの写真をお母さんにも送信していたようです。
お母さんは「アンタ浮かれすぎ。職場で誰が見てるかわからんよ。」と釘をさしていたようです。
ご対面した私に対しては
「なちさんが誠実ないい人なのは会えばわかる。」
「でも離婚したとは言え、いまだに元嫁と同居してるのってどうなの?大丈夫なの?」
「でも春までだし、春から居なくなるから!」
という理沙に対して、
「優太くんの問題も含めて、きちんと時間をかけて考えなさい。」
…という話だったそうです。
大人2人は恋愛モードでピンク色になってのぼせ上がってましたが、至極真っ当な話しでした。
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