苦悩の日々

第3章

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五十路男物語
第3章 夢の終わりと再構築
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結婚指輪が無かったことってそういう事なのか…?

翌日からの私は、目に映る全てが虚構のように感じられて気力を失ってしまい、張りつめていた糸が切れてしまったようで、ただお酒を飲んで過ごしていました。
酔いが回っているときだけ、向き合いたくない事から目をそらすことが出来ました。

その数日間、明らかに様子がおかしい私を心配する美雪の声もまったく入ってきません。

数日間の逡巡を経て、意を決した私は美雪に話します。

なち
「美雪がバリで2年間暮らして、大きく変わったことってある?」

美雪
「んー?、全部自分ごとだって考えられるようになったかな。」
「バリの日本人たちはみんな精神的に自立していて、全部自分の責任でやるっていう覚悟っていうか、腹が決まってる感じかな。」
「なにかあっても誰かのせい。じゃなくて自分のせい。って感じだね。」
「それがすごーく腑に落ちてる。」

なち
「凄いね。俺にはまだ理解しきれないし、真似できないわ。」

美雪
「そこは自分の気の持ちようだからね。なち君の覚悟次第だよ。」
「バリで頑張ってる人は心の波動の高さを感じるんだよね。」

なち
「波動かー、全然わからん。」

黒いノートのことは、どうしても聞けませんでした。
聞けば何かが終わってしまう。
そんな気がして、結局当たり障りのない話しかできませんでした。

是非はともかく、その会話をしていて感じたのは、私たちは、もう同じ景色を見ていないのかもしれない。そんな感覚でした。

夫婦で見ている景色が変わってしまい、長距離走で2周くらい周回遅れになったような感覚でした。
ただただ、焦りだけが強くなっていきました。

ママ友・夏帆ちゃんへの相談

何もしないまま時間だけが過ぎていくことに耐えられなくなり、友人の夏帆ちゃんに相談してみることにしました。

夏帆ちゃんは、子どもを通じて知り合った家族ぐるみの友人でした。美雪とも奈央ちゃんとも仲が良く、文字通り家族ぐるみで仲良くしていました。

私にとっては、夏帆ちゃんもその旦那さんも良き飲み友達で、ワインを2~3本持って綾を連れてお泊りで遊びに行くこともしばしばで、わりと言いたいことを言い合える親友とも言っていい相手でした。
夏帆ちゃん自身も自らの子育ての悩みから、心の持ち方について学んで、その当時からお母さん向けのコーチングの仕事も始めていました。

意を決し、夏帆ちゃんへメッセを送ります。

※当時のやり取りを、記憶をもとに再構成しています。

なち
「夏帆ちゃん久しぶりー。ちょっと相談したいことあるから、お家お邪魔してよいかな?」

夏帆ちゃん
「おーなちくん久しぶりー。どした?」
「どうせ美雪ちゃんのことでしょ?ww」

美雪には相談したことを伝えず、後日、仕事を調整して夏帆ちゃんの家を訪れました。

夏帆ちゃん
「おーいらっしゃい。つか仕事大丈夫なの?まーいいや入って。」
「…では、なちくんの話をお聞きしましょうか。」

夏帆ちゃん謹製の暖かいオーガニックティをいただきながら

黒いノートの話。
自分の心の内の悩み。
これからどうしていったらいいかわからない事。

夏帆ちゃんには全てを包み隠さず話しました。

今振り返って思うと、このくらい美雪にも本音で話せていたら、また違った未来もあったのかも知れませんが、当時の私はそれが全く出来ませんでした。

夏帆ちゃん
「うーん、はなしは分かったよ。とりあえずそのノートの内容が事実がどうかは置いといて、やっぱりなちくんの中の問題でもあるね。」

「多分だけど、今わたしが勉強していることが役に立つことが多いとは思うけど。」

「それを正式に私が「お仕事として」手助けしながらやってみるか決めるのは、なちくんだからね。」

「まー、ちょっと考えてから必要なら連絡してね。その時は全力でお手伝いさせていただきます。」

夏帆ちゃんのコンサル

自力ではどうすることもできないほどに袋小路にはまり込んでいた私は、1日考えて夏帆ちゃんの助けを借りることを選びました。

夏帆ちゃん
「なちくんはさー、いろいろなことをメチャクチャ貯め込みすぎだから、とにかくそれを出していこう!」
「潜在意識と顕在意識というものがあってね…」
「まずは思っていることを全部ノートに書いてみよう。」
「あとは週一で課題を出すからそれを続けてみて。」

・・・・

約2か月、夏帆ちゃんのコンサルを受けて、こころの持ちように変化が出てきました。

綾が塩対応しても腹が立たなくなりました。
優太が「野菜食べないー。」などと言ってもブチ切れなくなりました。
美雪にキツイ言い方をされてもさほど気にならなくなりました。

心の持ちようは少しずつ変わっていきました。

でも、

夫婦の距離だけは、少しも縮まりませんでした。

そして、無造作に本棚へ置かれた美雪の黒いノートには、半月ごとに新しいページが増えていました。

私は、それを見ないと決めても、結局また開いてしまいます。

いったい何が書かれているのか。

そんな不安から逃れることができませんでした。

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