疑念

第3章

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五十路男物語
第3章 夢の終わりと再構築
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美雪から送られて来た動画を見てからも、毎日は流れていきます。

朝起きたらみんなで「おはよう」と伝え、家族4人での朝食を食べ、休日にはみんなでイオンに行って買い物をして…。

改めて当時のメッセンジャーを見ると、離婚の話しなんて全く何事もなかったかのように

「帰り牛乳と卵買って帰って」
「10日の17時で優太君のお迎えいけるかな?」
「18日○○さんの家に寄ってこれる?」

などと日常のやりとりが記されていました。

美雪が東京研修に行き始めてしばらくすると、美雪に少し変化がありました。

なんだかあか抜けてきたというか、話すトーンが変わったというか、具体的にどうというよりも、「なんか感覚的に話し方が変わった」といった感じでした。SNSでの写真の撮り方というか映り方も、なんというか起業家セミナーで習ってきたなーというかなんというか…。

その時は

「東京ではいい学びがあるんだろうな。」
「美雪のやりたいことを後押し出来て良かったな。」

と好意的に受け止めていました。

夏帆ちゃん宅の飲み会にて

ある週末のこと、自然園時代の友人たちと、夏帆ちゃん宅で持ちよりの飲み会がありました。

綾は昔馴染みの仲間たちと旧交を温め、優太はマスコットキャラとしてみんなに可愛がられていました。

私も気心の知れたパパママ仲間たちと楽しい時間を過ごしましたが、隣でいい感じで飲んでいた夏帆ちゃんが真顔で

夏帆ちゃん
「ねぇ、なち君さー。美雪ちゃんなんか変わった?」

なち
「んー、東京行っていろいろ勉強してるからね。」

夏帆ちゃん
「いや、そういうんじゃなくて、なんか立ち振る舞いというか雰囲気が変わったっていうか。」

その時は

そんなもんかいな?と思いましたが、いざ夏帆ちゃんに指摘されてみると、それは違和感として、そして不安として、私の中でどんどん膨れ上がっていくのでした。

黒いノートに記されていたもの

夏帆ちゃんとの会話で、改めて意識するようになった違和感を確かめるため、そして、何も気になることが書かれていなければいい。

そう思って開いた「黒いノート」

以前このノートを開いてから、しばらく時間が経っていました。
そこには、その間に書かれた東京研修についての記録が残っていました。

新しい環境への刺激。
学ぶことの楽しさ。
子供たちへのお土産のこと。

そして、その中に何度か登場する、私の知らない名前がありました。

「○○さん」

研修で知り合った人なのだろう。
書かれていることだけを見れば、それ以上でもそれ以下でもありません。

でも、その頃の私は、その名前が妙に気になってしまいました。

一度気になり始めると、頭から離れなくなりました。

美雪の雰囲気が変わったこと。
夏帆ちゃんに言われた言葉。
黒いノートに何度か出てきた、知らない名前。

それまでなら気にも留めなかったようなことまで、ひとつひとつが引っかかるようになっていきました。

そうして私は、次第に疑心暗鬼になっていきました。
美雪の発言の一つ一つにも、自分への誤魔化しがあるように感じられて――
なんだか点と点がつながってしまっていくような、押しつぶされそうな不安と不満で、眠れない夜が続きました。

でも、それを美雪に問いただすことは出来ませんでした。

少しでも情報を得たい。
「そうじゃない」という情報を見つけて安心したい。
何か見つかれば、自分が傷つくだけなのも分かっていました。
もし何かあったとしても、それを確かめる術など私にはありませんでした。

そして私たちは、そのまま日常を続けました。

それから二か月ほどが過ぎた、夏のある日のことです。

ノートパソコン

古い書類ごみを分別していると、美雪の少し前に使ったであろう書類もまざっていました。
「こんな仕事も頼まれてるんやー・・・」などと、分別しながら眺めていると、ある書類の端に書かれた

新しいPASS….

という一文が目に留まりました。

「これは…」

心臓が飛び出しそうになりながら、マックの電源スイッチを入れて、震える手でその文字列を入力すると…

マックが起動しました。

やっていいことだったとは、今でも思っていません。それでも当時の私は、確認せずにはいられませんでした。

そして、SNSのメッセンジャーの中には、私が最も見たくなかったやり取りが記されていました。

※注意※
本人の許可なく日記やスマートフォン、パソコンなどの個人的な情報を見ることは、プライバシーに関わる行為です。
当時の私が実際に取った行動について書いていますが、その行為を正当化する意図はありません。
あくまで「当時、何が起きて、私はどう行動したのか」という過去の記録としてお読みください。

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