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五十路男物語
第3章 夢の終わりと再構築
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新しい職場にも慣れて私の仕事も順調に進み、少しづつ重要なセクションを任されるようになってきました。
仕事は毎日充実していましたし、子供たちとの関係も上手く行っていました。
しかしながら、美雪との距離は縮まることがありませんでした。
そんなある日。
美雪の仕事の師匠の先生が数年ぶりに北海道に来た際にアップされたSNSの画像。
先生と凄く安心した表情で嬉しそうに笑う美雪の写真。
ああ、こういう顔で俺に対して笑ったのっていったいどのくらい前だったろう…。
その笑顔が、いつの間にか自分には向けられなくなっていた。
そのことに改めて気づいた瞬間、胸が押しつぶされそうになり、静かに涙が出ました。
底の抜けた柄杓
思えば、美雪たちが帰国して初めて黒いノートを見てしまってから。
もしかしたら、バリ島移住に突き進んでいたときから。
積み重なった不安を解消するために、私は美雪の顔色をうかがいながら、「間違わない選択」を続けていました。
それが自分のためにならないことは、頭では分かっていました。
それでも、不安になるたびに相手の反応から安心できる答えを探してしまう。
いわば「底の抜けた柄杓で水をすくい続けている」ようでした。
それが本当に美雪の望んでいることなのか。
そもそも、自分はどうしたいのか。
そんなことを考えることすらやめて、私はただ水を汲み続けていました。
陽子さんの訃報
そんなある日。
SNSを開くと、陽子さんが亡くなったことを知らせる、元旦那さんの投稿が目に入りました。
陽子さんには、バリで美雪が妹のように可愛がってもらい、私が日本に残って奮闘していた時にも、たくさんの励ましの言葉を掛けてもらいました。
そんな陽子さんの死を心から悼む気持ちとともに、
「時間は無限ではないんだ…」
「いまこうやって足踏みしていて良いのだろうか。」
そんなことを強く考えるようになりました。
もちろん、それだけで何かを決断したわけではありません。
ただ、その頃の私はもう、ずいぶん長い間、同じ場所で水を汲み続けていました。
汲んでも、汲んでも、溜まらない。それでも、いつかは溜まるかもしれないと思って汲み続ける。
そんな毎日に、私自身が限界を感じ始めていました。
私の言葉
このまま続けるのか。
それとも、自分から終わらせるのか。
怖くなかったと言えば嘘になります。
十数年続いた夫婦生活でした。
ふたりの子供たちのこともあります。
この先どうなるのかなんて、何ひとつ分かりません。
それでも私は、勇気を振り絞って美雪に伝えました。
「離婚しよう…」
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